国内にマイクロ・ブリュワリー(小規模な醸造所)が700軒以上もある「クラフトビール天国」でもあるオーストラリア。今回は個性的で美味しいと評判の人気の「ペールエール」5種類を飲み比べしてみました。
オーストラリアのクラフトビール事情
「クラフトビール」は「マイクロ・ブリュワリー」と呼ばれる小規模な醸造所で作られたビールのこと。厳選した材料を使い独自の製造方法で作られたビールは、同じ種類でもワインのように作り手によって全く異なる個性的なフレーバーが楽しめます。
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2020年8月現在、オーストラリアには727軒のマイクロ・ブリュワリーがあるそうで、家族経営の小さな醸造所から、もはや「マイクロ・ブリュワリー」とは呼べないほど大成長した企業までそのテイストも様々です。
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シドニーでは街中いたるところにある「パブ」でもクラフトビールがタップで楽しめ、シドニー最古のパブ「LORD NELSON」でもオリジナルのビールが飲めるし、ダーリング・スクエアにあるクラフトビール専門店「BUSCKET BOYS」や、普通のボトルショップ(酒屋さん)でも様々な種類のクラフトビールが手に入ります。
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PALE ALE(ペールエール)とは?
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「SUPER DRY」を始めとするドライで喉越し爽やかなラガー系がお馴染みの日本とは違って、オーストラリアでは苦味と香りの豊かな「ALE(エール)」と呼ばれるビールがメジャー。ラガーとエールは発酵プロセスや製造方法が異なるので、香りや喉越し、テイストなどに違いがあります。
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1500年以上前にイギリスで生まれ、ビールの原型とも言われているエールビール、その代表格が「PALE ALE(ペールエール)」。一番オーソドックスで個々の醸造所の個性が楽しめるビールだと言われているので、「クラフトビールを試してみたい」という方にオススメです。
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色の濃いビールが主流だったイギリスで色が「PALE(薄い)」ためペールエールと名付けらたそうですが、実際にはラガーより色は濃いめです。今回はオーストラリアのクラフトビール・フェス「GABS(Great Australian Beer SpecTAPular)」で、2019年ベスト10にランクインした商品を中心に5種類のペールエールを飲み比べしてみました。
①LITTLE CREATURES PALE ALE(リトル・クリーチャーズ・ペールエール)
オーストラリアで最初にアメリカン・ペールエールを作ったクラフトビール界の老舗ブリュワリー「LITTLE CREATURES(リトル・クリーチャーズ)」は、西オーストラリア州のFREMANTLE(フリーマントル)生まれ。親会社は酒造大手のライオン、更にその親会社がキリンビールなので、もはやマイクロ・ブリュワリーとは言えません。
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中でもペールエールはリトル・クリーチャーズの看板商品。若干の澱と濁りのあるオレンジかかった濃い色合いで、一口含むと舌に苦味がガツン、その後ホップとシトラスの爽やかな香りがフワッと鼻に抜けていきます。フレッシュながらしっかりとした苦味があり、舌がまったりしたモルト感に包まれる、フルボディな味わいです。
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因みにブランド名のLITTLE CREATURES(小さな生き物)は、ビールを発酵する際の酵母をイメージしたものだそう。瓶にはオリジナル・ロゴの天使マークが刻印されていてカワイイです。昼のBBQや夜のディナーなど、どんなシーンにもフィットする「毎日ビール」という感じですね。
因みに2年ほど前から日本でも販売しているみたいですよ。
LITTLE CREATURES PALE ALE
330ml(瓶)$5.54
ABV(アルコール度数):5.2%
IBU(苦味単位):36
②STONE & WOOD PACIFIC ALE(ストーン&ウッド パシフィック・エール)
「STONE & WOOD(ストーン&ウッド)」は、NSW州南部にあるヒッピー文化やサーフィン、ヨガの聖地と言われるBYRON BAY(バイロン・ベイ)生まれ。
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ここの看板商品「PACIFIC ALE(パシフィック・エール)」は、他のメーカーも同じ名称のビールを後追いで販売し出した程、クラフトビール業界に旋風を巻き起こした人気商品です。因みに2019年のGABSのランキングでは堂々の第1位を獲得しています。
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淡い黄色で少し濁りのある液体で、口に入れるとフワッと香るホップのアロマ、トロピカルフルーツのようなほのかな甘さ、スッキリとした後味が特徴です。さっぱりしてとても飲みやすく、夏のビーチサイドにぴったりな軽さなので、ビールの苦味が苦手な人でもゴクゴク飲める美味しさですよ。
(因みにオーストラリアではビーチでの飲酒は基本NGです)
STONE & WOOD PACIFIC ALE
375ml(缶)$5.49 / 330ml(瓶)$4.99
ABV(アルコール度数):4.4%
IBU(苦味単位):30
③BRIDGE ROAD BEECHWORTH PALE ALE(ブリッジロード・ビーチワース・ペールエール)
メルボルンから約300km、田園風景が広がるのどかな街BEECHWORTH(ビーチワース)にある「BRIDGE ROAD BREWERS(ブリッジ・ロード・ブリュワーズ)」。2005年に裏庭の小屋から始まった小さな家族経営のブリュワリーが、今では340席を有するブリューパブやピッツェリアを構える人気ブリュワリーになりました。
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今回試飲した5種類の中では一番濃いアンバー色ですが、その色合いに反して味わいは意外にもマイルド。舌にモルトの甘味が若干残りますが、後味はスッキリで苦味はほとんど残りません。少しスモーキーで、「wet leaves(濡れた落ち葉)」のような熟成感ある香りを感じたかな?若干物足りなさも感じますが、口当たり良くまろやかな味わいです。
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因みにGABSランキングでは第6位。2018年は5位とだったのでワンランクダウンですが、常に上位にランクインする人気ビールです。ホップが散りばめられたパッケージもカワイイ!BEECHWORTHは数々のワイナリーや美味しいハチミツ「BEECHWORTH HONEY」などがあるエリアなので、少々遠いですがいつか行ってみたい場所ですね。
BRIDGE ROAD BEECHWORTH PALE ALE
330ml(瓶)$4.99
ABV(アルコール度数):4.8%
IBU(苦味単位):32
④YOUNG HENRYS NEWTOWNER AUSTRALIAN PALE ALE(ヤングヘンリーズ・ニュータウナー・ペールエール)
シドニーを代表する「YOUNG HENRYS(ヤングヘンリーズ)」は、個性的なお店が並ぶ街NEWTOWN(ニュータウン)生まれのマイクロ・ブリュワリー。街の名前を冠した「NEWTOWNER AUSTRALIAN PALE ALE(ニュータウナー・オーストラリアン・ペールエール)」がこちらのフラッグシップです。
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パッケージは古い劇場が並ぶNEWTOWNのイメージなのか、どこかクラシカルな雰囲気が漂います。また多様性のある街ニュータウンに因んで、ローカルで採れたホップをブレンドしているとか。
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一口飲むと口の中にホップとシトラスの香りが弾けて、その後に微かな甘みが広がり、最後にしっかりした苦味が残ります。と言ってもそこまでパンチがあって重い訳でもなく、喉越しはサラッとクリア。シンプルで飲みやすいので、どんな料理にも合う万能なビールという感じ。
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「YOUNG HENRYS」は「シドニーのローカルビール」と言えば必ず名前が上がるほど有名なブリュワリー。GABSでは2018年、2019年とも4位入賞とベスト3入りこそを逃していますが、他のランキングでも常に上位に入る人気ビールです。
YOUNG HENRY NEWTOWNER AUSTRALIAN PALE ALE
375ml(缶)$4.69 / 330ml(瓶)$4.69
ABV(アルコール度数):4.8%
IBU(苦味単位):35
⑤FOUR PINES PALE ALE(フォーパインズ・ペールエール)
シドニー近郊の人気ビーチ、MANLY(マンリー)のクラフトビール 「4 PINES(フォーパインズ)」。4本の松が描かれたアイコニックなパッケージは、マンリービーチ沿いに並ぶ松の並木を彷彿とさせます。こちらもシドニーを代表するメジャーなブリュワリーで、マンリーのフェリー乗り場の脇にブリューパブもあります。
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深い琥珀色のクリアなペールエールは、一口飲むと苦味のその奥にローストしたような、シガーのような深い香りを感じます(これがモルト臭なのかは不明)。その後に柑橘系のフルーティーな酸味がガツンと来る、苦酸っぱい味わいです。
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香り高くてしっかりとした苦味もある、どっしりしたフルボディ。タイミングによっては「ちょっと重いかな?」と感じるかもしれないけれど、コクと旨みがあるじっくり飲みたいビールです。
実はエールはキンキンに冷さず常温で飲むのが一番美味しいと言われているので、時間と共に微妙に変わる味わいを楽しめるエールの醍醐味的なビールですね。
FOUR PINES PALE ALE
330ml(瓶)$5.14
ABV(アルコール度数):5.1%
IBU(苦味単位):35
5種類のペールエールを飲み比べしてみて
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グルテンアレルギーのため実はビールは飲まない私ですが、オーストラリアに来た頃はペールエールの美味しさに感動したのを覚えています。今回はビール好きの夫がメインになって一緒に少しづつテイスティングをしたら、同じペールエールでもかなり味が違って面白かったです。
5種類の中で私の一番のお気に入りは‥‥‥
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④YOUNG HENRYS!!
香り高くてフルーティ、後味に苦味もありながら、サラッと飲めるバランスのいいビールです。
因みにビール好きの夫のお気に入りは‥‥
①LITTLE CREATURES
毎日でも飲みたい、どんなシーンにも合うビール
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⑤4 PINES
味わい深く、少しヘビー。タイミングによっては若干重めなので、じっくり飲みたい時にぴったりなビール
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‥‥だそう。
今回はペールエールをご紹介しましたが、他にもIPAやXPA、ダーク系のSTOUTやDARK ALEや、ビール党でない私でも美味しいと感じたお気に入りビールもあるので、それはまた改めてご紹介します。
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美味しいビールはポテトチップスにもベストマッチ!ジャケ買いしたいくらいパッケージがカワイイものも多いので、お土産にもぴったり。どこでも比較的簡単に手に入るので、オーストラリアに訪れたらクラフトビールを色々飲み比べしてみてください。
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