シドニーで毎年11月に行われている建築を巡るツアー「SYDNEY OPEN 2018(シドニー ・オープン)」に今年も行って来ました。現在カジノやシティ・レールの駅など大規模開発真っ只中、人気レストランも続々出店している話題のエリア「BARANGAROO(バランガルー)」を中心にご紹介します。
建築を巡るイベント「SYDNEY OPEN(シドニー・オープン)」
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SYDNEY OPEN(シドニー ・オープン)は「SYDNEY LIVING MUSEUM(シドニー・リビング・ミュージアム)」が毎年開催する、シドニーの歴史的建築物からオフィスビルまで普段一般公開されていない様々な建物を巡ることができるイベントです。
(「シドニー ・オープン」の詳細については去年の記事やtripnoteに寄稿しています)
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今年(2018年)は11/3(土)〜4(日)の2日間開催され、3日は予約制の見学会、4日はチケットを購入して全部で42箇所ある建物を自由に回れるオープンアクセス方式のものでした。2日目のチケットは大人1人 で$49.00。こちらのピンクのリストバンドを付けていれば何処でも入場できます。
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昨年は行きたい場所があり過ぎて、駆け足で回ってかなり疲れてしまったので、今回は開発中の注目エリア、BARANGAROO地区を中心にゆっくり建物を回ることにしました。
【1】構造設計事務所のオフィス「ARUP OFFICES AT BARRACK PLACE」
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まずはWYNYARD(ウィンヤード)駅近く、BARRACK PLACE(バラック・プレイス)というオフィスビルの中にある建築構造設計事務所ARUP(アラップ)のオフィスからスタートです。
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ARUPは建築業界にいる人なら知らない人はいない、世界的にも超有名な構造設計事務所。有名なところでシドニー のオペラハウス、日本では銀座のエルメスや新宿の東京モード学園などの構造設計を担当しています。
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私が携わっていた「意匠設計」は主に建物のデザイン、それを構造的に成り立つかロジカルに解析するのが「構造設計」です。優秀な構造設計者がいないと、特に現代のデザイン性に富んだ建築が成り立たないほど、超重要なボジションを担っています。
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オフィスは4層ぶち抜きで、吹き抜けからスタッフが作業しているデスクが見渡せます。ちょっと見ただけでは構造設計の事務所とは思えないほど、とても開放的な空間なのにビックリしました。個人的には今まで暗めの事務所で黙々と作業していたので、このオープンな感じは素直に羨ましいです。
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デスクの上には何もものが無くキレイに整頓されていて、これにまたビックリ。係の人によると個人のロッカーがデスクの後ろにあるので、デスクにものを置いておく必要がないとのこと。スッキリしていて仕事がはかどりそうなオフィスですね。
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【2】オフィスビル「1 SHELLY STREET」
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BARRACK PLACEを出て、今度はERSKINE STREETの坂を下ってBARANGAROOへ。こちらは白いクロスしたファサードが印象的な外観のオフィスビル、「1 SHELLY STREET」です。まるで桃などの緩衝材のネット(フルーツキャップって言うらしい)が被されているみたいなデザインです。
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こちらには1年前にも訪れたMACQUARIE GROUPのオフィスがテナントで入っていました。中に入ると天井まで吹き抜けが通っていて、ものすごい開放感です。所々ブロックのように吹き抜けに飛び出ているのが、ミーティング・ルームだそうです。それぞれ番号が振られていて、まるで宇宙基地みたいですね。
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【3】バランガルーのランドマーク「KPMG at TOWER 3 / INTERNATIONAL TOWERS SYDNEY」
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INTERNATIONAL TOWERS SYDNEY(インターナショナル・タワーズ・シドニー )はBARANGAROOのランドマーク的なオフィスビル群です。カラフルなルーバーの色で建物自体にうっすらと色が付いたように見える、3つの連続したビルです。
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まずはその向かって一番右側にある黄色のTOWER 3にある「KPMG」のオフィスに向かいました。
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KPMGはオランダを拠点にしている企業専門の財務監査や税務専門の会計事務所です。企業向けの会計事務所のオフィスなんて入ることはそうそう無いので、ちょっと楽しみです。
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やっぱりグローバルな会計事務所だけあって、打ち合わせ室などもかなりラグジュアリー。こちらではランチ・ミーティングでもするんでしょうが、この眺望なのでちょっとしたレストランのようです。
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建物やインテリアももちろんそうですが、今回楽しみだったのは高層ビルからのこの眺めです。このTOWER 3は3つのタワーの南端に建っているので、バランガルー南部にあるダーリング・ハーバーが一望できます。
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ダーリング・ハーバーも現在大開発中なので、恐らく数年後にはこの景色もガラッと変わってしまいます。日々変わりゆくシドニーを眺めながら働くのは楽しいんだろうなと思いつつ、恐らくここで働いている人達はゆっくり外を眺めてボーッとする時間なんて無いんだろうなと思ってみたり。
【4】ハーバーブリッジを望む「BAKER MCKENZIE at TOWER 1 / INTERNATIONAL TOWERS SYDNEY」
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次に訪れたのは国際的な企業専門の法律事務所であるBAKER MCKENZIE(ベーカー・マッケンジー)のオフィスがある、INTERNATIONAL TOWERS SYDNEYの赤いTOWER 1です。
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事務所は3フロアに渡っているので、ものすごい広さです。ただでさえ家賃が高いシドニーで、「家賃は一体いくらなんだろう」なんて考えてしまいます。
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やはり法律事務所らしく、法律関係の本が所々に並んでいます。実際に作業されているオフィス部分は立入禁止でした。
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こちらのオフィス、そのインテリアももちろん気になりますが、やっぱり気になるのはここからの眺望です。カフェテリアの窓の向こうには180℃以上のハーバー・ビューが広がっています。
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こちらは3つのビルの中で一番北側にあるので、ハーバー・ブリッジやノースシドニー が一望できます。あと数年後には左側にクラウン・カジノなどのビルが建ってしまうので、こちらの眺望もかなり変わってしまいますね。
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WALSH BAYエリアにある、以前ご紹介した人口の公園BARANGAROO RESERVEや倉庫カフェのPIER 8 CAFE、絶景のオシャレなバーのHENRY DEANE、シドニー 最古のパブLORD NELSON BREWERYも窓から見えます。写真下側にチラッと見えるのが、現在建設中のバランガルー駅です。
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こちらは置かれている家具が温かみのある木や色味のものが多く、先程のKPMGよりもホッコリしたインテリアが印象的でした。因みにこの北欧っぽいレザーの椅子、結構座り心地が良かったです。
建築を楽しむと言うよりは、どちらかと言うと眺望を楽しんだINTERNATIONAL TOWERS SYDNEYでした。
【5】剥き出しの砂岩の壁が印象的な「30 THE BOND」
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最後に訪れたのは現在クラウン・カジノの工事真っ最中の現場前にある9階建てのオフィスビル「30 THE BOND」です。元々ガス工場の跡地だった場所に建てられたビルが、サスティナブルなビルとして生まれ変わりました。
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入り口を入るとまず驚くのが、アトリウムの脇に約6フロア分の高さにも及ぶダイナミックな砂岩の壁です。オーストラリア入植時代から残る削り取られた荒々しい崖には、苔や草が生え、今でも水が湧き出ています。
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この崖自体はアトリウム全体のデザインの中核になっているだけでなく、断熱材としても機能しているので、このエリアはエアコンが入っていないのに冷んやりと涼しいです。通り沿いの窓に取り付けられた可動式のルーバーやチルド・ビームと呼ばれる空調システム、屋上緑化などで温室効果ガスの排出を削減しています。
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オーストラリアのオフィスビルとしては初めて建物の環境基準で5スターAGBR(Australian Green Building Rating)を獲得しており、既に30以上の建築賞も受賞しているとか。環境への取り組みももちろんそうですが、この荒々しい崖をそのまま残して建物を建ててしまう大胆なデザインには脱帽します。
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今回は全部で5スポット訪問しました。10:00amから見始めてランチを食べて、2:00pm前には帰りのバスに乗っていたので、正味3時間くらいでしょうか。他にも色々行ってみたかったけれど、このくらいでちょうど良かったかもしれません。
来年は何処が参加するのか、今からちょっと楽しみです。11月にシドニーはボンダイビーチで行われるSculpture by the Seaなどイベントが目白押し。初夏で天気も良く気持ちいい日が多いので、季節的にもすごくオススメなシーズンですよ。
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SYDNEY OPEN
TEL:02-8239-2211
大人 $49.00