シドニー有数のブルワリーがひしめき合うクラフトビールの聖地「Marrickville(マリックビル)」の中でも、かなり個性的で自然派の「Wildflower Brewing & Blending(ワイルドフワラー・ブリューイング&ブレンディング)」。オーストラリアの自然を感じたい人やナチュラル思考な人にオススメな醸造所です。
Wildflower Brewing & Blending(ワイルドフワラー・ブリューイング&ブレンディング)
私が知る有名店だけでも、10軒以上のブルワリー(醸造所)が軒を連ねるシドニー郊外のMarrickville(マリックビル)。古びた倉庫が並ぶ昔ながらの倉庫街も、今ではシドニーのビール好きにはあまりにも有名な「ビールの聖地」になっています。
そんなマリックビルにある個性的なブルワリーの中でも、特に異彩を放っているのが「Wildflower Brewing & Blending(ワイルドフワラー・ブリューイング&ブレンディング)」。どちらかというとアクティブで陽キャな(どんなイメージ?)ビール業界の中でも、職人気質のある落ち着いた独自路線を貫いているイメージです。
「ワイルドフラワー」という屋号ならではの「ワイルド=自然」なパワーに着目したビールや、店内のシャビーな雰囲気もいい感じなので、実は前々から気になっていたこのブルワリー。今まではビール好きの夫主導で訪れていたブルワリー巡りですが、今回敢えてビール党ではない私が選んだのがここです。
ラスティックな雰囲気漂うインテリア
ワイルドフワラーがあるのは、ニュータウンとマリックビルの間。以前ご紹介したThe Grifter Brewing Co.(グリフター)の、すぐ真裏のブロックです。この日はニュータウンでお茶をした後、お散歩がてら訪れました。ビール党でない私も冷たいビールが飲みたくなるほど、かなり気温の高い日だったのを覚えています。
メイン通りのVictoria Roadから少し中に入り、「本当にここで大丈夫?」と躊躇しながら落書きだらけの倉庫街を進んで行くと、ブルワリーに到着です。(シドニーの治安は世界的に見てもいい方だとは思いますが、ここは夜はあまり歩きたく無いかも)
柱や梁に時代を感じる建物は、19世紀に建てられた元倉庫だったもの。年季の入った骨組みにアルミの波板などインダストリアルな雰囲気の中に、無造作に掛けられたドライフラワーや何気なく置かれたオーストラリアン・ネイティブ・フラワーが、シャビーでやわらかい雰囲気を演出しています。
塵ひとつない美しく整頓された空間‥‥では無いながらも(もちろん清潔感はありますが)、ゆったりした空気感で落ち着ける、ここにしか無い唯一無二な雰囲気があります。
ただこの日は結構暑かったにもかかわらず、ガランとした店内にあるのは扇風機一個だけ。最初はあまりの暑さにやられそうになりつつも、冷たいビールを飲んで徐々にクールダウンしました。客席脇に並んだ樽には番号が振られ、年代ごとに様々なビールが醸造されているみたいです。
自家製自然酵母のナチュラルなビール
「野生的」で「アグレッシブ」なイメージがある「ワイルド」という単語も、自然大国オーストラリアでは、大地のパワーは感じつつも、自然由来の天然で人工的でない「ナチュラル」なイメージがあります。
ワイルドフラワーのビールは「ビール酵母」「野生酵母」「バクテリア」などの自然由来の材料を用いて発酵することにフォーカスしています。シドニーのあるNSW州に自生する花や樹皮から採取した自然酵母を、何年もかけて自家発酵&熟成させているんだとか。
ここには醸造施設が無いためベースのビールは近所のBatch Brewingで醸造し、そこに自家製酵母を加えて熟成し、自然由来の複雑な風味や味わいを深めるため、新しい樽と古い樽のビールをブレンドしているそう。店名に「ブレンディング」とあるのはそのためです。
この途方もない工程は、何だかワインやスピリッツ作りに似ている気がする‥‥と思ったら、ビール瓶も何だかワインボトルっぽくておしゃれ。ホームパーティのお土産やちょっとしたギフトにも喜ばれそうですね。もちろんブルワリーの定番、オリジナルのロゴTシャツもありました。
「ブレンドにこだわりあり」ということでまずオーダーしたのは、基本のオーストラリアン・ワイルド・エールをベースに、5種類の熟成時期の異なるビールをそれぞれブレンドした、看板メニューのGold BlendとAmber Blend。新しいものでは5ヶ月程度、古いものになると24ヶ月も樽熟成したものを、その時々に合った絶妙なバランスで配合しているそう。
柑橘系の酸味と樽独特のオーキーな香り、土っぽい感じもあるゴールドブレンドと、キャラメルのような深みと苦味、ナッツのような香ばしさを感じるアンバーブレンド。この味わいが楽しめるのも今だけで、熟成具合によって同じビールでも風味が変化していくので、時期によって全く違った味が楽しめるというのも面白いです。
カレーを作る過程で適当にスパイスを入れ過ぎて、「最高の調合ができた!」と思っていたらその分量を全く覚えていない‥‥なんてことは、当たり前だけど無いんでしょうね。私はよくやります。
その他にも定番のOrganic Table BeerやSt Abigailなども飲んでみましたが、どのビールにも言えるのが、様々なテイストが複雑に入り混じった、繊細で奥深い味わいだということ。タップから注がれたキンキンに冷えたビールをグイッと飲んで、喉越しを楽しむと言うよりは、繊細な泡や香りをじっくりと味わいながら楽しむ、と言う感じのビールです。
天然酵母のせいなのか、どのビールも炭酸控えめで適度な酸味を感じるので、個人的にはKombuchaような印象を受けました。コンブチャ好きでビール好きで無い私は、このやさしい味わいが好みでしたが、ビール好きの夫は「うーん」という感じだったよう。
こればっかりは好みが分かれますが、個性的なブルワリーが多いマリックビルの中でも、超個性的でこだわりの自然派ビール。ワインのようにビールを楽しんでみたい方にオススメです。
11-13 Brompton St, Marrickville NSW 2204, Australia
OPENING HOURS:
FRI – SAT 12:00pm – 8:00pm
SUN 12:00pm – 6:00pm