オーストラリアのサードウェーブコーヒーを代表する人気ロースター「Single O(シングルオー)」。シドニーの雰囲気漂う店内、こだわりのコーヒーメニュー、そして日本ならではのおもてなしが融合した、魅力溢れる両国店と浜町店に訪れた。
オーストラリアのコーヒーロースター「シングル・オー」
「シングル・オー(Single O)」は、オーストラリアのコーヒー業界における、サードウェーブの先駆けの一つだ。シドニーのサリーヒルズに拠点を構える人気ロースタリー・カフェで、自社店舗の運営に加え、シドニー中のカフェやレストランにオリジナルのコーヒー豆も提供している。
シグニチャーブレンドの「Reservoir Blend(レザボア・ブレンド)」は、サリーヒルズ本店が位置するReservoir Streetにちなんで命名されている。シドニーと同じ味が楽しめるおすすめのコーヒーだ。
2014年オープンの一号店は両国店
既にシドニーで老舗感のあるシングル・オーは、2014年に日本進出も果たしている。マイクロロースターと呼ばれる小さな焙煎所だった両国の一号店は、2024年に大きなスペースに新しく移転した。
新店舗は、赤茶色に錆びたトタンの壁が印象的な、かつての倉庫を改装した建物だ。店内は小さく、カウンター席とテーブル席を合わせても15席に満たない。
外部のロースターに続く通路と道路側には、テラス席さながら小さなベンチが置かれている。この力の抜けたウェアハウス感は、シドニーで足繁く通ったブルワリーを思い出す。私が訪れた日は蒸し暑かったため迷わず店内席を選んだが、気候が良ければ外席も魅力的だろう。
すっきりとシンプルなインテリアの店内は、いい意味で作り込みすぎていない、シドニーのSingle Oを彷彿とさせる抜け感がある。和かでフレンドリーな店員さんのホスピタリティも、シドニーさながらだ。
棚にはSingle Oお馴染みのコーヒー豆のパックが並び、そのすぐ隣の棚にはオーストラリアの国民食「ベジマイト」も。そんなベジマイトが使われているのは、Aussie Jafflesというオーストラリア風ホットサンドだそう。
オーストラリアでは見たことがなかった、カウンターに並ぶコーヒーサーバーのPourover Coffe on Tapが面白い。真夏の訪問だったため、シングルオリジンのアイスコーヒーが提供されていた。
まず、適度な甘みとチェリーやパイナップルの風味が特徴の、パプアニューギニアの豆をチョイス。グラスをタップの下に置いた瞬間、コーヒーが勢いよく注がれ始める。たった10秒で出来上がるという、この一連の演出も楽しい。
私はアイスコーヒーの炭酸割り「コールドブリュートニック」をオーダー。キンキンに冷えたコーヒーの心地よい苦味とコク、シュワシュワとした炭酸の爽やかな喉越しが、この日の蒸し暑さを吹き飛ばすような絶妙な美味しさだった。
居心地が良すぎて、気がついた時にはすっかり日が暮れていた。お店が18:00まで開いているのも、日本ならではで嬉しい。シドニーのカフェではまず考えられない(通常15:00閉店)。
〒130-0014 東京都墨田区亀沢3-21-5
TEL:0362404455
OPENING HOURS:WED - SUN 10:00〜18:00
シドニー店の雰囲気に近い日本橋の浜町店
2021年にオープンした日本橋浜町店は、シングルオーの2号店だ。日本橋のオフィス街にあり、駅からも遠く、必ずしも便利な立地とは言えない。にもかかわらず、店内は若い客層で賑わっていた。
最近、清澄白河などの東京東部に足を運ぶ機会が増えているが、コーヒーやカフェ文化が若者に絶大な人気があるんだなと肌で感じる。店内は平日にもかかわらず、席を待つ人の列ができていた。他に行くあてもないので、しばらく入り口で待つことに。
外にはハイスツールとテーブルも並べられている。シドニーなら迷わずテラス席を選ぶけれど、この日の東京は気温6℃と凍えるほどの寒さ。東京のエクストリームな気候では、テラス席のフル活用は難しいのかもしれない。
ダークトーンを基調にしたこちらの店舗は、洗練された都会的な雰囲気が漂う。天井には、シドニー店でもお馴染みの、コーヒー豆をあしらったペーパーインスタレーションが広がる。シドニーのシングルオーの雰囲気をより感じたいのなら、こちらの店舗をおすすめしたい。
ただ、初めて目にするコーヒーサーバーに感動したり、興味津々で質問してみたものの、クールな店員さんの反応は若干薄め。かなり混み合っていたから、彼らもお疲れだったのかもしれないけれど。
東京都中央区日本橋浜町三丁目16-7 スプラウト日本橋浜町 1F
TEL:0343610479
OPENING HOURS:MON - FRI 7:30〜19:00 / SAT - SUN 8:00〜19:00
シドニーと東京のカフェの違い
フードメニューはサンドイッチやバナナブレッド、ケーキやクッキーなどの軽食のみ。ランチにサリーヒルズ店のような手の込んだ料理を楽しめればと思っていたが、むしろシドニーCBD店のようにコーヒーに特化したメニュー構成なのかもしれない。
最近、渋谷アクシュの1Fにコーヒーバーがオープンしたそう。もちろん日本のシングルオーでお馴染みの、例のコーヒータップがズラリと並んでいるという。オーストラリア流のエスプレッソ文化よりも、日本ではドリップの方が人気があるのかもしれない。
とはいえ、日本におけるシングルオーの勢い、まだまだ止まりそうにない。