シドニーのインナーウェストに位置するMARRICKVILLE(マリックビル)は、個性豊かな街NEWTOWN(ニュータウン)の隣にあり、美味しいベトナム料理店やクラフトビールの醸造所が軒を連ねる、多様な文化が融合するエリアです。
そんなマリックビルの地域と文化の交流の場として、「MARRICKVILLE LIBRARY(マリックビル図書館)」が誕生しました。
シドニーインナーウェストに誕生したマリックビル図書館
MARRICKVILLE LIBRARY(マリックビル図書館)は、元マリックビル病院の跡地に新しくできた図書館。今回は2019年8月31日にグランドオープンした記念の、内部見学会に参加してきました。
場所はMarrickville(マリックビル)駅から徒歩10分程度。Marrickville Rd(マリックビル・ロード)とLivingstone Rd(リビングストン・ロード)の交差点にある、山切りカットの屋根が目印です。
図書館へは、通りからサンクン・ガーデンに下りてアクセスします。1200㎡もあるこの広場では、今後映画の上映会やワークショップなどのイベントが行われるそうです。
建物を覆うように張り巡らせた木製ルーバーは、陰影が美しいのはもちろん、ほっこりした温かみもあります。
開放感溢れる天井の高い吹き抜け空間
入り口を抜け、天井の高い広々としたロビーに入ると、周囲を囲っている木製ルーバーから心地よい木の香りが漂っています。トップライトや大きな窓からは陽の光が入り、明るく気持ちのいい空間です。
図書館の見せ場の1つである大きな階段状のベンチは、換気の吹き出し口も兼ねているんだとか。建物内の空気を効率よく循環させて、エネルギー消費の削減を目指したサステイナブルなデザインです。
建物内外に使われている木製ルーバーには、NSW州の鉄道橋で使われていた廃材が使用されています。丸い大きな柱に使われているのは、イタリアからわざわざ輸入したサステイナブルな木材だそう。「輸入」と「サステイナブル」は相反する気もするけど‥‥ま、いいでしょう。
図書館のデザインを担当したのは、以前ご紹介したウラーラのDOUBLE BAY LIBRARYも設計した「BVN ARCHITECTURE」。この階段状のベンチが並ぶ開放感ある空間は、確かにダブルベイ図書館に似ていますね。
シドニー歴史遺産の病院をリノベした図書館
この図書館プロジェクトでは、1899年に建てられたマリックビル病院の古い建物を残したまま、新築部分の建物と融合するというリノベーションが行われました。因みにマリックビル病院は、NSW州の歴史遺産に指定されています。
当時病院で使われていた27,000個以上のレンガを始め、図書館のさまざまな場所で、窓枠、天井梁などを再利用しています。新築した箇所と元の古い建物、新しいものと古いものが絶妙なバランスで混ざり合った良いプランです。
現在読書室として使用されているのは、元女性用の病棟だった場所だそう。外壁のレンガやフランス窓、ドア材などそこかしこに当時の名残を感じます。開放的なロビーとは対照に、こちらは集中力が上がりそうな落ち着いた空間です。
地域コミュニティのための憩いの場
館内にある23台のPCの内、何と6台には、既にADOBEのクリエイティブクラウドがインストールされていました。セキュリティが若干気になるけれど、Adobeのソフトが無料で自由に使えるなんてすごいですね。
広々とした子供用閲覧室の奥には、遊具もあるプレイグラウンドがあります。この日も小さな子供達と親御さんで大賑わいでした。プレイグラウンドの脇には、植栽の水やりやトイレに使われている雨水用のタンクが並んでいます。
プレイグラウンドに横たわる鮮やかな黄色いカンガルーは、昔この辺りに生息していたEastern grey kangarooをイメージしたものだそう。この辺りにもカンガルーが住んでいたっていうのは、オーストラリアならではですね。
夕方になると学校帰りの学生達も増えて、図書館はますます活気づいてきます。小さい赤ちゃんから老人まで、老若男女が入り混じる、まさに地元コミュニティの憩いの場です。
地元カフェのコーヒーも楽しめる
図書館内には、地元マリックビルの人気カフェ「DOUBLE ROASTERS」の店舗もありました。作業にちょっと疲れたら気軽に休憩やランチもできるのもいいし、美味しいコーヒーを飲みながら作業できるというのも嬉しいですね。
地元で人気のコーヒーロースターを図書館に誘致してしまうのは、地元の活性化に寄与するのはもちろん、「コーヒーにも妥協しない」というオージーらしさに溢れている気がします。とにかく素晴らしいアイデアです。
開放的な大空間とリサイクルウッド、レンガの質感、そして窓から差し込む光。これら全てが、マリックビル図書館の温かくやわらかい雰囲気を演出しています。新しくても過剰に新しすぎない、そんなほっと落ち着く心地良さが特徴の図書館です。
シドニーにはデザインにこだわった図書館が多いですが、どこも地元住民に愛される居心地の良い図書館ばかりです。普段からよく図書館は利用しますが、また行きたいなと思わせる印象的な図書館が増えました。
MARRICKVILLE LIBRARY AND PAVILION
Patyegarang Place, 313 Marrickville Road, Marrickville, NSW 2204
TEL:02-9335-2173
OPENING HOURS:
MON – THU:9:00am – 7:30pm
FRI:9:00am – 5:30pm
SAT – SUN:10:00am – 5:00pm