ボルドー・メドック地区を巡るワイナリー・ツアー | BORDEAUX

ワイン通でなくても知っている世界的に有名なワインの産地「ボルドー」。「ボルドーに訪れたらワイナリーに行かないわけにはいかない」ということで、「5大シャトー」があるメドック・グラーヴ地区を中心に巡るワイナリー・ツアーに参加しました。

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ワインの名産地であるフランスの「ボルドー」

フランス南西部にあるワインの名産地「BORDEAUX(ボルドー)」は、フランス国内だけでなく世界中にその名を轟かせています。少し茶色がかった赤色を「ボルドー」と呼ぶように、主に「MERLOT(メルロー)」や「CABERNET SAUVIGNON(カベルネ・ソーヴィニヨン)」などの色味の濃い赤ワインが多く生産されています。

ブドウ畑を所有し、栽培、醸造、瓶詰めまで全ての工程を行う「生産者」のことを、「」を意味する「Château / シャトー」と呼んでいるのもボルドーの特徴の1つです。元々は広大な敷地と大邸宅を持つ貴族などの富裕層達が、敷地内で収穫されるブドウを醸造する場所として大邸宅(シャトー)を使ったことが始まりだと言われています。

お城のような建物が全てのシャトーにあるわけではありませんが、ブドウ畑の緑が広がる田園風景の中に築数百年以上の石積みのお城が見えるのもボルドーらしい風景です。エリアごと、シャトーごとに栽培する品種や栽培・醸造・熟成方法も異なり、それぞれ独自のスタイルを追求しています。

ボルドーのシャトー3軒を巡る1日ツアー

ボルドーでワイナリー巡りは外せないけど、お酒を飲んだら車の運転はできないし、ほとんどのシャトーが完全予約制だし、しかも収穫時期やバカンス時期など不定期にお休みになったりするから予約も面倒臭いし(しかもちょうどフランスの革命記念日のパリ祭の時期と丸カブリ)‥‥ということで、今回はボルドー市内から出発するワイナリー・ツアーに参加しました。

(因みにオーストラリアのほとんどのワイナリーは好きな時にフラリと立ち寄れる所が多いので、その点はカジュアルでかなり気楽です)

ツアーのメニューも半日〜1日、2〜3軒、場所もメドック地区の左岸を回るコースや、世界遺産である右岸のサンテミリオン地区を回るコースなど色々あります。ワインスクールで少々ワインを勉強した私的には‥‥

  1. 大好きな「カベルネ・ソーヴィニヨン」を主体としている
  2. 格付け「Les Grands Crus classés en 1855」1級の5大シャトーの内の4つのシャトーがある

という理由で「メドック」に決定。バスでメドック地区を中心に3軒のシャトー見学と試飲、ランチが付いた1日のツアーを選びました。訪問するシャトーは当日まではわからないというミステリーツアー形式でしたが、かなり楽しめましたよ。

シャトー・オー・ブリオンのお隣「Château Les Carmes Haut-Brion(シャトー・レ・カルム・オー・ブリオン) 」

最初に訪れたのはボルドー市街の中心から車で約15分とアクセス抜群の「Château Les Carmes Haut-Brion(シャトー・レ・カルム・オー・ブリオン)」です。こちらはMEDOC(メドック)ではなくGRAVES(グラーヴ)という地区にあたり、AOCはPESSAC-LÉOGNAN(ペサック・レオニャン)です。(AOC=原産地統制呼称制度というワインの品質に関する法律)

グラーヴ地区には1855年に行われたワイン格付けで1級を取得した5大シャトーの内、唯一メドック以外から選ばれた「シャトー・オー・ブリオン」があります。 砂利を意味するGraves(グラーヴ)という名前の通り「砂利」の多い地質で、良質な赤ワインも有名ですが、辛口の白ワインや甘口の貴腐ワイン(私の大好きなSauternesも!)でも有名なエリアです。

このシャトーは元々「レ・カルム」という名の修道院が所有していたもので、フランス革命の際に一旦は剥奪され、その後様々な人手に渡った後、現在は不動産開発会社がワイナリーを運営しています。近隣には超有名な「Château Haut Brion(シャトー・オー・ブリオン)」が隣接していて、しかも昔「オー・ブリオン」が使用していたブドウ畑の一部だったということもあり、競売にかけられた際考えられないくらい高額な取引になったそうです。

敷地は10ha程度と比較的小さめの住宅地の中にある都市型のシャトーですが、一歩中に入ると小川が流れ緑溢れる景色が広がっています。まるで池の中から浮かび上がった潜水艦のような独特のフォルムの建物は、何とフランス人インテリア・デザイナー「フィリップ・スタルク」が設計した醸造施設なんです。

施設内には醸造所だけでなく、ネゴシアン(卸売業者)と商談するオシャレなバーのようなカンファレンス・ルームもあります。ここでテイスティングするのかとワクワクしましたが、残念ながら一般人のテイスティングは別の部屋だそうです。

砂利、粘土、砂が入り混じった敷地では、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローが生産されていて、その年の収穫具合によって微妙にブレンド(アッサンブラージュ)を変えています。

今までボルドーと言えば「メルロー」と「カベルネ・ソーヴィニヨン」をメインにブレンドするものと思っていましたが、ここは珍しく「カベルネ・フラン」を高めな割合(50%以上)でブレンドしているので、ほんのり大地の香りも感じつつ、爽やかで繊細な果実の味わいが広がるワインが楽しめました。

Château Les Carmes Haut-Brion

20 Rue des Carmes, 33000 Bordeaux, France
TEL:+33-5-56-93-23-40
OPENING HOURS:
MON – SAT:9:30am – 12:30pm / 2:00pm – 6:00pm

マルゴーの4級「Château Marquis de Terme(シャトー・マルキ・ド・テルム)」

2番目に訪れたのはグラーヴ地区を北上したメドック地区のMargaux(マルゴー)にある「Château Marquis de Terme(シャトー・マルキ・ド・テルム)」。こちらも超有名な5大シャトーの1つ「Château Margaux(シャトー・マルゴー)」の近くにあり、1855年の格付けでは4級を取得しています。「マルキ(公爵)・ド・テルメ」というシャトー名は、1762年当時の所有者だった「テルメ公爵」に由来しています。

「シャトー」と呼ぶにはこじんまりした平屋の建物が並ぶワイナリーですが、建物の中には近代化した設備が完備されていて、発酵にはステンレス・タンクとコンクリート・タンクが使用されていました。知る人ぞ知る秘蔵ワインを作り続けているシャトーで、アメリカ元大統領のトーマス・ジェファーソンもここのワインのファンだったそうです。

2013年から徐々にオーガニック製法へと移行して行き、現在は100%オーガニック製法を徹底。2017年にはオーガニック認定を受けています。

こちらのワインはカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・ヴェルド、カベルネ・フランをブレンドしていて、「カベルネ・ソーヴィニヨン」の割合が55%以上と一番多め。色合いは黒に近い暗めの赤で、熟したブラック・フルーツとほのかなグリーンの香り、スパイシーさ、強いタンニンを併せ持つフルボディのワインが味わえます。

ボルドーのシャトーでは、基本的に1種類(または2種類)のワインしか生産しません。
(逆にオーストラリアでは1つのワイナリーで何種類もの銘柄のワインを作っているのがザラです)

ファースト・ラベル」と呼ばれるその年の代表作である一押しワインと、一部のシャトーでは「セカンド・ラベル」と呼ばれるファースト・ラベルの基準には適合しないものの、品質は確保していて価格帯は抑えられたワインも作っています。

朝9:30からスタートしたワイナリー・ツアーも、そろそろ折り返し地点。ちょうどお腹が空いてきた頃に、こちらのシャトーでランチをいただきます。2016年の「ファースト・ラベル」と2014年の「セカンド・ラベル」を飲み比べしながら、フォアグラのテリーヌや子牛のホワイトソース煮など、ワインに合うお食事がいただけました。

通常グラスに半分程度のテイスティングですが、食事中にどんどん注いでくれるのでついつい飲み過ぎてしまいます。生産者のROBERTさんに直接ワイン製造の話を伺いながら、食事に合わせて好みをワインを好きなだけ楽しめる貴重なひと時でした。

Château Marquis de Terme

3 Route de Rauzan, 33460 Margaux, France
TEL:+33-5-57-88-30-01
OPENING HOURS:
MON – SUN:9:00am – 6:30pm

サン・テステフの4級シャトー「Château Lafon Rochet(シャトー・ラフォン・ロシェ)」

最後に訪れたのは緑のワイン畑の中に突如として現れる黄色い建物が印象的な「Château Lafon Rochet(シャトー・ラフォン・ロシェ)」です。マルゴーから更に北へ30km、メドック地区で最も北に位置するSaint-Estèphe(サン・テステフ)というエリアにあります。

小川を挟んだ南側には5大シャトーの1つ「Château Lafite Rothschild(シャトー・ラフィット・ロートシルト)」があり、畑が隣接しているという土壌的にもかなり恵まれた立地です。5大シャトーともなると敷地が広大なので、門の外の道路からは建物の詳細までは確認できませんね(因みに今回訪れた3軒は、5大シャトー内の3シャトーのご近所でした)。

元々は1650年に設立されフランス革命時にもブドウ畑を没収されることなく生き残りましたが、様々な人手に渡り一時はかなり荒廃。現在のオーナーであるテセロン家が畑や醸造施設の大規模な刷新を行い、格付け4級にふさわしいワインを生産するまで盛り上げたようです。

建物の外壁は先代によって明るい黄色に塗り替えられましたが、一部のワイン関係者からはナンセンスだと酷評されているとか。明るい空と緑のブドウ畑の中に建つパキッとした黄色の可愛い建物が印象的で、私個人的には結構好きです。

外壁の色に触発されて、併せてワインのエチケットも明るい黄色に変更しました。因みにテイスティングルームのインテリアにも、イメージカラーのイエローの小物が使われています。

41haのブドウ畑にはカベルネ・ソーヴィニヨンが57%、メルローが37%、プチ・ヴェルドーが4%、カベルネ・フランが2%植えられています。ここのブドウ畑は独特の粘土質のテロワールを持っていて、それはボルドー最高峰とも言われる「Château Pétrus(シャトー・ペトリュス)」と同じタイプの地質だとか。それだけでもこのシャトーのポテンシャルを感じずにはいられません。

カベルネ・ソーヴィニヨンが66%と多めにブレンドされた黒みがかった深紅のワインは、熟したブラック・フルーツの果実味とほのかな木の香り、心地良いタンニンと酸味が感じられます。繊細な中にも果実味がしっかり感じられる味わいでした。

Château Lafon-Rochet

Blanquet Ouest, 33180 Saint-Estèphe, France
TEL:+33-5-56-59-32-06
OPENING HOURS:
MON – SUN:10:00am – 4:30pm

ワインを楽しみながらシャトー巡り

今回3軒のシャトーを巡り、施設が超近代化されているのにとても驚きました。「ニューワールド・ワイン」と呼ばれる歴史の浅いオーストラリアでは、伝統が無い分どんどん新しい技術を取り入れて近代化する流れがありますが、勝手に「オールド・ワイン」の生産国フランスでは伝統を重んじた昔ながらの製法が守られていると思っていたからです。

AOCがあるので細かい規定はたくさんありますが、温度管理や発酵速度などは全てコンピューター制御、タブレットなどで機械的に管理されているなんて、実際にワイン造りをこの目で見て確認するまで想像していませんでした。
(どのシャトーも手摘みにこだわり、選別やブレンドなど人間の手に頼る部分はもちろんたくさんあります)

ボルドーには現在約7,000程のシャトーがありますが、年々数は減少しているそう。体力のない小さいシャトーが徐々に廃業し、逆に大規模なシャトーがそのブドウ畑を買い取って規模を広げているようで、それだけ「ワイン造り」が手間暇とお金を消耗する大変な作業なんだということがわかります。

今回訪れたシャトーはそこまで知名度が高くはありませんが、どこも素晴らしいワインを作るワイナリーばかりでした。そんなワイナリーがボルドーにはまだまだ沢山あるみたいなので、いつかまたここに戻って来て、しっかり時間を取ってまたワイナリー巡りしたいですね。

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