シドニー湾の岬の突端に佇む、世界遺産の「シドニー・オペラハウス」。オーストラリアを代表する世界遺産の歌劇場は、ハーバーブリッジとともに、シドニー市民の象徴的な存在です。
2023年10月、オペラハウスは50年の節目を迎えました。今回は50歳の誕生日を記念して、オペラハウスの魅力をたっぷりご紹介します。
オーストラリアの世界遺産「シドニー・オペラハウス」
オーストラリアを代表する歌劇場「シドニー・オペラハウス(Sydney Opera House)」は、コンサートホールとしてはもちろん、ハーバーブリッジと並ぶシドニーにはなくてはならないアイコン的な存在です。ガイドブックにも必ず登場する鉄板の観光スポットなので、シドニーに訪れたら絶対に外せません。
オペラハウスが位置するのは、フェリーターミナルがあるサーキュラーキー(Circular Quay)の程近くにある、ベネロング岬の突端。幾重にも重なる真っ白な貝殻のような建物は、白い帆を掲げた大きな船にも見えるし、羽を広げようとしている鳥にも見えます。
どっしりとした安定感がありつつも、今にも動き出しそうな躍動感もあるという、まさにオンリーワンなデザイン。その斬新さゆえ、近代建築の最高傑作と言われていて、2007年にはユネスコの世界文化遺産にも登録されています。
シドニー・オペラハウスの建築と歴史:波乱万丈の50年
今でこそオーストラリアを代表する建築物のオペラハウスも、完成までは紆余曲折あり、まさに一言では語り尽くせない波瀾万丈な歴史がありました。
1957年当時、参加者233の中から設計コンペを勝ち抜いたのは、デンマーク人建築家Jørn Utzon(ヨーン・ウッツォン)。今までの常識を覆すような、緩やかなラインの重なる有機的なフォルムは、審査員(特にエーロ・サーリネン)の気持ちを鷲掴みしたそう。確かにサーリネンが好きそうなデザインではあります。
ここまでは若手建築家のサクセスストーリーに聞こえるけれど、そこからが大変だったそう。ユニークなデザインやアイデアも、実際に建てるとなると構造、工法、お金、政治などなど、様々な問題が立て続けに発生します。
構造や工法も厄介ですが、いつでも一番問題になるのはお金です。当初700万ドルだった予算は、14.5倍の1億2000万ドルまで膨れ上がり、遂にはその責任を取って最終的にはヨーン・ウッツォンが設計担当者から外れます。残念なことにウッツォンはオペラハウスの完成を見ることはなかったそう‥‥悲しすぎますね。
そんなこんなで計画開始から完成まで約16年という月日が流れ、1973年にオペラハウスは遂に完成!当時の建築技術の集大成とも言える独創的で美しい建物は、近代建築の傑作として世界中に広く認知されることになりました、めでたしめでたし。
この波瀾万丈さ、「エッフェル塔」みたいに映画にしたらなかなか面白そう。オーストラリア人映画監督のバズ・ラーマン辺りが、ミュージカルとか企画してくれないかな。
オペラハウスの魅力と楽しみ方ガイド
それではここからは、オーストラリアを代表する歌劇場「オペラハウス」の私流の楽しみ方をご紹介します。
オペラやコンサートなどのショー観劇
楽しみ方の王道は、やっぱりショーの観劇。オペラハウスには全部で大小7つの劇場があり、毎日どこかで何かしらのショーが行われています。中でも1番の見どころは、約2年間の改修工事を経てオープンしたばかりのコンサートホールです。
「オペラハウスの音響は残念」というのは結構有名な話で、今まで座る場所によって聴こえ方が全く違かったとか。ただ2018年に訪れた坂本龍一氏のコンサートでは舞台の真正面だったせいか、その前衛的すぎる演奏スタイルのせいか、実際にあまり不具合は感じませんでした。
今回の工事では舞台上部に花びら型の可動式反射板を設置して、その問題だった音響設備が大幅に改善されているとか。改修後のホールでまだ演奏を楽しんではいませんが、その違いを感じるのが楽しみです。
さらに2024年のオペラは、「椿姫(La Traviata)」「オルフェオとエウリディーチェ(ORPHEUS & EURYDICE)」「魔笛(The Magic Flute)」モーツァルトの「イドメネオ(Idomeneo)」といった名作が勢揃いします。
レストランで美食を堪能
観劇だけではなく、食も堪能できてしまうのがオペラハウス。施設内には4箇所のカフェやレストランがあり、どこも評判は上々です。私自身オペラハウス内に入ることはあまりありませんが、レストランは割と頻繁に利用します。
人気の絶景レストラン&バー「オペラバー」
オペラハウスの麓、シドニーハーバーの際にあるレストラン&バー「Opera Bar(オペラバー)」は、個人的にシドニーでよく訪れるレストラの一つ。お散歩ついでにフラリと立ち寄れるカジュアルさがありつつも、軽くオシャレしてディナーの前の一杯に訪れることもできます。
お酒の種類も多く、ムードもいいし、何より眺望も最高。全てにおいてバランスの取れたレストランです。
リニューアルしたばかりのレストラン「ハウスキャンティーン」
オペラバーのすぐお隣にある「ハウスキャンティーン(House Canteen / 旧オペラキッチン)」は、オペラバーをさらにカジュアルにしたレストラン。Canteenという名の通り併設食堂的な要素は強めながらも、オペラバーと同じく人気シェフのMatt Moranがプロデュースしているので、味は間違いありません。
眺望はオペラバーに負けませんが(むしろこちらの方が眺望がいい)、なぜかこちらの方がいつも空いています。オペラバーに入れなかった時のバックアップとしてもいいし、朝から夜までオープンしていて使い勝手のいいお店です。
オーストラリア版ミシュラン2ツ星レストラン「ベネロング」
オペラハウス特有の、あの大きな帆のような屋根の麓にあるレストラン「ベネロング(Benelong)」は、オーストラリア版ミシュランのシェフズ・ハット・アワード(Chef’s Hat Award)で2ハット(2ツ星)に輝く名店。劇場併設というよりは、シドニーのレストランを語る上で外せないお店です。
シドニーに住んでいるなら一度は行ってみたいと思いつつも、せっかくなら何かしらのイベントに絡めようかななんて考えていると、なかなか行く機会がありません。先日義母も「今度行ってみたい!」と言っていたので、これはそろそろ行けそうな予感がします。
近代建築の傑作を探訪するツアー
観劇までしなくてもいいけれど、建物内をちょっとだけ覗いてみたい…という方におすすめなのが、館内を巡るツアー。コロナ禍で一時休業状態だった日本語ツアーも、2022年から完全復活しています。
リハーサルのある場合はNGですが、運が良ければリオープンしたばかりのコンサートホールに座れることも。見所盛りだくさんのあっという間の30分間で、建築好きや世界遺産好き、歴史好きでなくても十分に楽しめます。
\ 冬旅セール中!クーポン付き /
オペラハウスの絶景撮影スポット5選
オペラハウスに訪れたら、そのダイナミックな姿をバックに記念撮影したいもの。フォトグラファーの私がお勧めする、オペラハウスが美しく撮影できるフォトスポットを少しだけご紹介します。
ミセス・マッコーリーズ・ポイント(Mrs Macquarie’s Point)
ロイヤル・ボタニックガーデン(Royal Botanic Garden)の岬の突端にあるMrs Macquaries Point(ミセス・マッコーリーズ・ポイント)は、恐らくシドニーで1位2位を争う程のオペラハウス絶景スポットなのでは。
オペラハウスの真東に位置するので、オペラハウス越しのハーバーブリッジを一緒にカメラに収めることができます。日中の美しさはもちろん、夕日をバックにするオペラハウスも美しいです。
ヒクソンロード・リザーブ(Hickson Road Reserve)
ミセス・マッコーリーズ・ポイントのオペラハウスを挟んで西側。ハーバーブリッジの麓にある公園「ヒクソンロード・リザーブ(Hickson Road Reserve)」も、オペラハウスの絶景ポイントの一つ。年末カウントダウン花火の人気観覧スポットでもあります。
朝靄の中に浮かび上がるオペラハウスはとても幻想的で、まさにため息ものの美しさ。逆に、夕陽に照らされてオレンジ色に色づくオペラハウスもなかなかです。
パークハイアット・シドニー(Park Hyatt Sydney)
ヒクソンロード・リザーブと同じ並びにあるラグジュリー・ホテル「パークハイアット・シドニー(Park Hyatt Sydney)」。最近はクラウンやWなど新しいホテルが続々と建設されましたが、一時期はシドニーで一番高いホテルだと言われていました。
そんなパークハイアットの目の前の遊歩道も、インスタグラマーに人気の撮影スポット。ガラス越しに向かい合わせに映ったオペラハウスの撮影ができる、唯一無二の場所です。
キリビリのビューラー・ストリート(Beulah Street)
橋を渡り、反対のノース側からオペラハウスの顔を眺めるのもなかなか。ルナパークやジェフリーワーフもいいけれど、特におすすめなのがBeaulah Street(ビューラー・ストリート)からの眺め。海の上に浮かんでいるような、オペラハウスの真正面の顔が拝めます。
キリビリはぷらぷらお散歩しているだけで、建物の間から不意にこんな場面に遭遇できる楽しい街。雰囲気のいいカフェやジャカランダスポットもあるので、散策ルートとしてもおすすめのエリアです。
シドニー・フェリー(Sydney Ferry)
海の街・シドニーということで、やっぱり外せないのがフェリーからの眺め。東方向に出発するフェリーであれば、サーキュラーキーからオペラハウス周辺を旋回するようなルートを取るので、建物全景を見上げるようなダイナミックな画が楽しめます。
マンリーやワトソンズベイにショートトリップに行くのもいいし、対岸のキリビリに行く際にもフェリーを活用してみてください。その際は進行方向右側の席を死守です。
オペラハウスのマスコット・オットセイのベニー
因みにオペラハウスには、マスコット的な存在のオットセイがいます。ベネロング岬にいるので、その名もBenny(ベニー)。岬先端にある船着場の階段で、天気の良い日などはお昼寝しています。
オペラハウスに行ったら、昼寝の邪魔をしないようにそっと覗いてみてください。運が良ければ2頭が並んでいることもありますよ。
オペラハウスの50周年を迎える感動
そんなシドニー・オペラハウス、2023年10月20日に50歳の誕生日を迎えました。残念ながら行けなかったけれど、10/21〜22の週末は入場無料のイベントも開催されたとか。そんな「祝50年!」でセレブレーションムード満載のオペラハウスの様子を少しご紹介します。
周辺のボードウォークでは、オペラハウス建設の歴史を辿る写真展が開催中。完成まで16年もの年月をかけた、ドラマティックな軌跡を確認することができます。
さらに、ボードウォークの先にあるベネロング岬の突端「Bennelong Point」では、先住民アボリジナルをルーツに持つアーティストMegan Copeのインスタレーション「Whispers」が展示中。使われているのはシドニー民お馴染みのオイスターの殻。全ての作品には合計85,000個の貝殻が使われているんだとか。
ベネロング岬は当時アボリジナルの人々が貝などを獲って暮らしていた場所だそうで、彼らの歴史に敬意を表すと共に、生命を海に還すという意味が込められているそう。シドニーロックを頬張るベネロングに来ている人達の前に、山積みの牡蠣の殻が展示されているというのも、何ともシュールです。
ショップでも50周年記念グッズが販売中です。缶バッジやメダルと共に、見た感じ記念グッズだとわからないオシャレなポーチもありました。オペラハウスグッズは意外にデザイン的に可愛いものが多いので、お土産に喜ばれますよ。
シドニー市民が愛する不朽のアイコン
私自身、長期間シドニーを離れていると、オペラハウスを見て初めて「あぁ、シドニーに戻って来たな」と実感するほど、シドニーには無くてはならない象徴のような存在のオペラハウス。
迫力のある凛々しい姿で、いつも私達をそっと見守ってくれています。シドニーを訪れる際は、是非オペラハウスに訪れてみましょう。その際立つ美しさと周囲の開放的な眺望に、きっと魅了されるはずです。
Bennelong Point, Sydney NSW 2000, Australia TEL:+61-2-9250-7111