妹島和世+西沢立衛/SANAAが手がけたNSW州立美術館 北新館| Art Gallery of NSW

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2022年12月、3年間の工事を経てニューオープンしたニューサウスウェールズ州立美術館(Art Gallery of NSW)の北新館。妹島和世と西沢立衛による日本人建築家ユニット「SANAA」による設計で、シドニーでも話題の美術館に訪れました。

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シドニーに新しくオープンした「NSW州立美術館 北館」

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都会に居ながら美しい緑も楽しめるシドニー。特にシティ東部に広がる「ロイヤル・ボタニックガーデン(Royal Botanic Garden)」や「ドメイン(The Domain)」、「ハイドパーク「Hyde Park)」は、シドニー民のオアシスのような存在です。

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2024年3月10日までは Kandinsky展が絶賛公開中

オーストラリア最大規模の収蔵数を誇る美術館「NSW州立美術館(The Art Gallery of New South Wales)」が位置するのは、そんな公園のすぐ脇。シドニーに数ある美術館の中でも、歴史的な建物や膨大なコレクション数などから、住民だけでなく観光客にも人気のスポットです。

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The Sydney Modern Projectの完成予想図

2022年12月、そんなNSW州立美術館に新しい北館(North Building)がオープンしました。「The Sydney Modern Project」と名付けられた周辺一帯の計画は、計画段階から10年、新館の建設だけでも3年の月日が流れ、さらに3億4,400万ドルを投じた一大プロジェクト。1973年に完成したオペラハウス以来の規模だったとか。

今回はそんな北新館の様子をご紹介します。

日本人建築家 SANAA(妹島和世+西沢立衛)が設計

妹島和世+西沢立衛/SANAAが手がけたNSW州立美術館 北新館| Art Gallery of NSW

The Sydney Modern Projectの私的注目ポイントは、何と言っても新館のデザイン。設計を担当した日本人建築ユニット「SANAA」(妹島和世&西沢立衛)は、建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞も受賞している世界屈指の建築家です。

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特に妹島さんは私が建築学科の学生だった頃はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、設計課題になると「妹島風なもの」が溢れる程、憧れている学生が多かったスター建築家。そんな私達世代のヒーローが、何十年後に自分の住む街の美術館を設計するというのは、なかなか感慨深いものがあります。

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ドメインの一角が囲いで覆われ、丘を切り開く大工事が始まったのはコロナ前。自宅の窓からこの工事風景を毎日眺めていたし、ほぼ毎日のように現場周辺をウォーキングで訪れていたけれど、待てど暮らせど完成せず。オープンまでの道のりはかなり長かったな、という印象です。

曲線とガラスで構成される軽やかな建物

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妹島建築 / SANAAの代名詞とも言える「曲線」と「ガラス」を多用したファサードは、もちろん北新館でも健在。透過性のある軽やかな北新館は、金沢にある21世紀美術館を彷彿とさせ、いわゆるSANAAっぽさに溢れています。

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建物の正面から眺めると、左手に鉄骨とガラスで構成された透過性のある北館、右手にはネオクラシック様式の円柱が並ぶ荘厳な本館(南館)が。2022年に竣工したばかりの建物と1870年代に建てられた建物、150年の時代を経た建物のコントラストも面白いです。

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建物の中央にある波型ガラスのキャノピーは、2つの建物を繋ぐバッファのよう。テラス越しにPotts Point(ポッツポイント)やWoolloomooloo(ウルムル)湾も見渡せるし、キオスクもあってちょっとした休憩にも良さそうですね。

地形を生かしたダイナミックな構成

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正面の道路側から見ると平屋のガラスの箱に見える新館ですが、建物の裏側は崖になっているので、道路レベルが最上階のGF、そこから下層の地下4階まで計4層で構成されています。

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エントランスホール中央にある大きな吹き抜けからは、ウルムル湾やポッツポイントの街並みが一望できます。景色を眺めながら、エスカレーターに乗って徐々に下層へ降りていく‥‥という動作自体もドラマティックです。「外の環境を感じる美術館」という意味では、箱根のポーラ美術館に近い気もします。

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冷たく無機質になりがちなガラスと鉄で構成された空間も、随所に茶色い砂岩をあしらった砂壁を使って、本館の砂岩の壁とリンクさせています。茶色とベージュの柔らかいグラデーションも、アートを邪魔しない美しさです。

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建物は四方をガラスで囲われているので、天気の良い日はかなり気持ちよさそう。この日はシドニーには珍しく小雨模様のド曇天でしたが、明るすぎず暗すぎず、これはこれで穏やかで落ち着いた雰囲気でした。

国内最大規模のアボリジナルアートのコレクション

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NSW州立美術館は、国内屈指のアボリジナル・アートの収蔵量でも有名です。文字を持たない先住民アボリジナルの人々がコミュニケーションツールとして描いたものを、アート作品として発掘したのがこの美術館の以前の副館長さんだったとか。

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引きで見ると更に映える、迫力のアボリジナルアート

アボリジナル・アート特有のドット・ペインティング(点描画)を中心とした作品群は、エントランスを入って右側にある「Yiribana Gallery(イリバナ・ギャラリー)」に展示されています。元々本館の地下3Fにあったギャラリーですが、ニューオープンと共に北新館に移転しました。

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広々とした明るい展示室は、以前よりも格段に見やすくなった気が。できる限り距離を取って眺めたい、ダイナミックなアボリジナル・アートとの相性はバッチリです。美術館滞在中は、ここで一番時間を取ってじっくり堪能しました。

草間彌生の作品などの現代アートも

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高低差のある崖に建つ利点を最大限に生かし、館内のあらゆる場所に屋外テラスが設けられているのも、この美術館の特徴です。

草間彌生「Flowers that Bloom in the Cosmos」

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「Flowers that Bloom in the Cosmos」草間彌生

道路レベルのStepped Terraceにある草間彌生の大きな彫刻も、この美術館のアピールポイントの一つ。連作の花シリーズ「Flowers that Bloom in the Cosmos」は、この美術館のために制作されたものだそう。

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せっかくのシドニーらしい青空をバックに撮影できなかったのが残念ですが、原色の水玉が散りばめられた、「ザ・草間」なカラフルでポップな彫刻は、自宅のバルコニーからも確認できるほどド派手。無機質な美術館の壁に、鮮やかで力強い独特の存在感を放っています。

Kimsoojaの泥団子のインスタレーション「Archive of mind」

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「Archive of mind」Kimsooja

草間作品以外にも、様々な現代アートが楽しめる北新館。特に楽しみにしていたのが、オープン当初から話題だったKimsoojaによる「Archive of mind」です。

塊から好きな色の粘土を選び、大きな作業台の前で丸く捏ねる。そして出来上がった粘土玉を好きな場所に置いていく、というビジター参加型のインスタレーションです。皆思い思いの大きさや形に、ただひたすら捏ねていきます。

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手がかなり汚れたけれど、久しぶりに触る粘土と黙々と玉を捏ねるだけという動作が、会場の静かな空間と相まってまるでメディテーションのよう。時間に制限がなければずっと遊んでいられるほど、なかなか興味深い展示でした。

充実のミュージアムショップ

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美術館と言えばミュージアムショップの楽しみの一つ。北館のミュージアムショップは、エントランスホールの一角にある緩くカーブしたパーティションの中にあります。

ポストカードやポスター、本などの定番美術館グッズ以外にも、デザイナーものの食器や小物、アクセサリーがあって、センスのいいセレクトショップのようです。イリバナ・ギャラリーで見て気になった、アボリジナルアートのポスターをゲットしました。

美術館併設のレストラン「MOD. Dining」

美術鑑賞は時間がかかるし、足も疲れるし、お腹が空く‥‥ということで、併設のレストランでランチしました。北館にはエントランスにキオスク、B1Fにレストラン、B2Fに小さなカフェがあります。

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今回ランチで訪れたのは、私がずっと行きたかった人気店「Automata Restaurant」の元シェフ、Clayton Wellsプロデュースのレストラン「MOD. Dining(モッド・ダイニング)」。残念ながらAutomataは閉店してしまったので、今回新しいお店に訪れることができてラッキーです。

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メニューは、旬な素材を使ったモダン・オーストラリアン料理だそう。光の差し込むガラス張りの店内は、週末のランチにぴったりの気持ち良さです(今回は生憎の天気だけど)。ファインダイニング的な要素が強かったAutomataよりも、かなりカジュアルな雰囲気かな。

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ワインなどお酒メニューも豊富ですが、少し肌寒かったのでまずはコーヒーをオーダー。豆はシドニーの人気ロースター「Single O」のものなので、安定の美味しさです。

オーダーしたサンドイッチは、昔懐かしの焼きそばパンを彷彿とさせる見た目。パンはふわふわ、濃厚な具材との相性も抜群です。キシキシとした独特の歯応えの、ハロウミチーズが安定の美味しさですね。

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Quinoa & brown rice salad, add chicken($23.00 + $6.00)

キヌアと玄米のサラダには、プロテインとしてチキンを追加。野菜中心ながらもセロリやザワークラウト、玄米など歯応えのある野菜と具材がたっぷりで、かなり満足感ある美味しさでした。

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本館にも人気シェフMatt Moranプロデュースのお店があるけれど、こちらの方がよりカジュアルな印象です。お料理とお店の雰囲気をじっくり楽しみたいなら、Crafted by Matt Moranに軍配が上がる感じかも?

私達はお腹がいっぱいでオーダーしなかったけれど、デザートメニューもあったのでお茶に訪れるのも良さそう。ナイトミュージアムのある水曜日以外は4:00に閉まってしまうのでご注意を。

MOD. Dining by Clayton Wells
1 Art Gallery Rd, Sydney NSW 2000, Australia
Opening Hours:
Mon - Tues:10.00am - 4.00pm
Wed:10.00am - 9.00pm
Thu - Sun:10.00am - 4.00pm
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