毎年2月中旬~3月にシドニーで開催される、世界最大規模のLGBTQI+の祭典「シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディグラ(Sydney Gay and Lesbian Mardi Gras)」。通りや店頭、家の軒先までレインボーカラーに溢れ、シドニー中がお祭り騒ぎになるビッグイベントです。
2024年は2月16日(金)〜3月3日(日)まで開催され、特にイベントのフィナーレを飾る3月2日(土)のパレードではその盛り上がりが最高潮に。今回はマルディグラで盛り上がる街と、パレードの様子を徹底解説します。
LGBTQIA+祭典「シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディグラ」
1月26日のオーストラリアデイが過ぎると、シドニーでは店先のショーウィンドウや看板、道路や住宅の窓・玄関ドアに至るまで、街中が徐々にLGBTの象徴であるレインボカラーに彩られます。
「Sydney Gay and Lesbian Mardi Gras(シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディグラ)」のシーズン到来です。夏の終わりの風物詩的な存在なので、レインボカラーを目にすると「もう夏も終わるのね」という気分になります。
シドニーで開催されるプライドイベント
マルディグラは、毎年シドニーで行われている世界最大規模のLGBTQIA+(ゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィア/クエスチョニング・インターセックス、エイセクシュアル etc)の文化を讃えるプライドイベント。
イベントは2月中旬から約2週間開催され、シドニー各所で300以上のパフォーマンスや映画上映、講演会やパーティなどが催されます。そして最終日前日の土曜夜(通常3月の第一週)、18:00〜23:00まで行われる大規模なパレードが、イベントのクライマックスです。
1978年から続くマルディグラの歴史
マルディグラは、同性愛がまだ犯罪行為とされていた1978年。迫害を受けていたゲイ&レズビアン達が、自分達の権利を主張するためのデモ行進が始まりでした。
当時は警察との衝突があり、多くの逮捕者が出ましたが、今やその警察や政府も全面サポートする、シドニー有数の大イベントになりました。
2023年にはワールドプライドも開催!
世界各地で開催される国際的なLGBTQIA+の祭典「ワールドプライド」が、2023年には遂にシドニーに上陸。抗議デモから始まったマルディグラも、やっと国際的に認められたということですよね。
ワールドプライド2023はマルディグラと同時開催され、シドニーでの開催は南半球で初、さらにアジア太平洋地域では初だったそうです。
世界中から50万人以上が集結!
マルディグラ開催期間中は、世界中からLGBTQIA+の人々や観光客がシドニーに押し寄せます。この時期のシドニーホテルやAirbnbは年末レベルの大混雑なり、空室をみつけるのも大変です。早めの予約がマストです!
パレード開催地はゲイタウン「ダーリングハースト(Darlinghurst)」
イベントのフィナーレを飾るパレードが開催されるのは、Oxford Street(オックスフォード・ストリート)を中心とする、Darlinghurst(ダーリングハースト)地区。LGBTフレンドリーなお店も多く、ゲイコミュニティには人気のエリアです。
地元のバーやレストラン、カフェはレンボーカラーで溢れ、マルディグラに合わせたメニューやイベントも開催されます。
パレードは、Hyde Park(ハイドパーク)の南端からオックスフォード・ストリートを通り、Moore Park(ムーア・パーク)まで約2kmの道のりを約4時間掛けて行われます。想像を絶する人出なので、パレードを最前列で見るためには4時頃にはスタンバイしておきたいところです。
当日は、午後から公共交通機関のバスサービスも一時中断され、オックスフォード・ストリート周辺は一斉に通行止めになります。バス利用ができないので、近隣の駅(MuseumやKings Crossなど)からアクセスしましょう。
パレードのおすすめ観覧スポット
パレードのちょうど中間地点に当たる「Taylor Square(テイラー・スクエア)」では、年TVの中継ブースやステージが設けられ、参加者達がカメラに向かってダンスやポーズを決める、一番盛り上がる人気スポットです。
家から椅子や脚立、ビールケースを持参している人達もいるほど、台に乗らないと全くパレードの様子が見えない程の人混みです。道路を完全封鎖しているので、移動するのも大変。徒歩でたった数分の移動も、30分以上かかります。
個人的にはテイラースクエアより、さらにフリンダー・ストリートを南下したVine Church(ヴァイン教会)辺りが比較的空いていておすすめです。パレード後半戦なのでパフォーマーもお疲れ気味なのは否めませんが、運が良ければ最前列で見ることもできます。
5時間に及ぶ大興奮のパレード
5時間に及ぶパレードは、約200の団体、1万人以上のパフォーマーが参加し、それを50万人以上の参加者が世界中から結集して見守る‥‥というものすごい熱気と興奮に包まれています。
キラキラとした衣装と派手なメイク、煌びやかなフロートの装飾やキレキレのダンスなど、個性豊かなパフォーマンスを見ているだけでテンションも爆上がりして、とにかく楽しいです!
世界的には昼間に開催されることが多いプライドパレードですが、夜に行われるシドニーのマルディグラは、何だかエレクトリカルパレードのような雰囲気。煌びやかさと華やかさもあるし、少し幻想的でもあります。
パレードに参加するLGBTQ+コミュニティ
ダブルデッカー乗って登場するのは、1978年当時のデモ行進に参加していた、初代マルディグラの参加者「78ers」。当時は逮捕され、新聞に名前まで掲載され、中には職も失った人もいたそうですが、バスの中から笑顔で手を振る彼らは本当に楽しそう!そんな彼らの壮絶な人生と功績を、私達は大きな温かい拍手と共に迎えます。
QANTAS(カンタス航空)やANZ(オーストラリア・ニュージーランド銀行)などのオーストラリアの有名企業も、パレードに参加しています。企業としてのLGBTフレンドリーのアピールもありますが、さすがに大企業だけあってお金の掛け方も違いますね。
The University of Sydney(シドニー大学)やUNSW(ニューサウスウェールズ大学)、UTS(シドニー工科大学)やTAFE(専門学校)など、教育機関も毎年パレードに参加しています。教育機関がこのようにLGBTQ+のサポートを掲げていると、そこで働く教職員や生徒のモチベーションも上がりますね。
その他、LGBTQIの子供を持つ親御さん達の団体、国籍別のグループ(日本人のグループもいます!)や医者やライフガード、警察や軍隊など職業別のグループなど、個性豊かなフロートが続々と登場します。
彫刻のような肉体の人達やありのままの美しさを追求する人達、完璧なダンスを披露するグループや自由に踊っているグループ、格好いいレズビアンのバイカー達からドラァグクイーンの華やかなお姉様方まで、みんな満ち溢れる笑顔で楽しそう!見ている私達も嬉しくなる、ハッピーオーラ全開の幸せな空間です。
個性あふれる華やかなパフォーマンス
ノリのいい音楽をかけているフロートは、観客も巻き込んで大盛り上がりします。お馴染みの「YMCA~♪」や、ゲイ界のアイコンでもあるCHER姉さんの「Believe(ビリーブ)」は、もはや鉄板ですね。パフォーマンスする人と観衆達が大合唱する一体感もたまりません。
衣装やメイク、踊りやデコレーションを見るのも楽しいけれど、セレクトする音楽も御用達ミュージシャンが多く興味深いです。オーストラリアが誇る歌姫のKylie Minogue(カイリー・ミノーグ)を始め、Madonna(マドンナ)やLady Gaga(レディ・ガガ)、Rihanna(リアーナ)辺りが定番ですね。
特に最近はDua Lipa(デュア・リパ)が大人気で、友人のフロートでも使用されていました。BGMに起用されるアーティストたちは、一貫して華やかさと凛とした強さを同時に持っているような気がします。
最後は警備に当たった警察やボランティアの人が行進し、彼等の仕事を讃える拍手とハイタッチで、長かった祭典が幕を閉じます。Happy Mardi Gras!(ハッピー、マルディグラ!)
多文化&多様な民族が共存するオーストラリア
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相も、毎年マルディグラのパレードに参加する常連組。彼の所属する与党・労働党は、多様性を重視するリベラル思想の党なので、国を挙げてLGBTQIA+コミュニティを支援しています。
多様性に寛容だとされていたオーストラリアですが、同性婚が正式に法制化されたのは2017年と実は遅め。国民投票で過半数を獲得したあの瞬間もお祭り騒ぎでしたが、あれから7年が経過していると思うと感慨深いですね。
性的嗜好だけではなく、国籍・人種・性別・文化など、あらゆる多様性を尊重しようとする考えがオーストラリアには浸透しています。移民大国であることはもちろん、困っている人がいたら放っておけないマイトシップ精神と、小さなことは気にしない、大らかな(大雑把な)オージー気質の影響もありそうです。
LGBTQ+フレンドリーな街・シドニー
マルディグラは娯楽的な要素が多い一方で、マイノリティの人々は日々さまざまな葛藤に直面していると考えられます。ただ、観覧する私たちや参加者全体が笑顔で楽しいひと時を過ごし、愛と自由で溢れた感動のイベントであることは確かです。
シドニー市の調査で、住民の21.3%がLGBTQIA+と言うデータもあるほど、シドニーはオーストラリアの中でもLGBTQIA+の人が暮らしやすい、LGBTQIA+フレンドリーな街だそうです。そんなシドニーに訪れたら、レインボーカラーに身を包んで、是非この感動のイベントを体感してみてください!