独自の生態系を持つ野生動物が生息し、手付かずの自然が島の大半に残ることから「オーストラリアのガラパゴス」とも呼ばれる「Kangaroo Island(カンガルー島)」。2020年に森林火災の被害を受けた島で、懸命に暮らす島の人たちや野生動物、再生する自然のパワーを体感しました。
オーストラリアのガラパゴス「Kangaroo Island(カンガルー島)」
アデレード市内から南へ約100km、オーストラリアでは3番目に大きな島「Kangaroo Island(カンガルー島)」は、今でも島の半分以上に手付かずの自然が残っている島として、南オーストラリア州の中でも絶大な人気を誇る人気スポットです。
昔は地続きだったオーストラリア本土と海を隔てて分離されてしまったことから、この島独自の植物や動物の生態系が残っているとか。「ノアの箱舟」や「オーストラリアのガラパゴス」とも呼ばれていて、島全体がオーストラリアの自然史博物館という感じです。
またカンガルー島は、2019-2020年にかけてオーストラリアを襲った森林火災の甚大な被害を受け、島の46%もの森林が火災により焼失してしまいました。森林火災の影響やそこからの復興を見届けるのも旅の目的の1つでもあります。
【1】カンガルー島の大自然「Flinders Chase National Park(フリンダーズチェイス国立公園)」
カンガルー島の西部に位置するFlinders Chase National Park(フリンダーズチェイス国立公園)は、広さ326.6㎢、カンガルー島全体の約1/10を占める自然保護区です。園内には「必ず訪れるべき絶景スポット」が点在していて、野生動物もたくさん生息しています。
公園内にある展望スポット「Bunker Hill Lookout(バンカーヒル展望台)」から見下ろすと、所々にまだ黒く焼け焦げたような跡が確認できます。火災当時は全ての木が煤に覆われ、一面真っ黒だったそう。今は緑の絨毯がはるか彼方まで続いているような壮大な光景です。
【2】海の力強さ感じる「Admirals Arch(アドミラルズ・アーチ)
公園の南西にあるAdmirals Arch(アドミラルズ・アーチ)は、南極海から吹き上がる風と波によって崖が侵食されてできたアーチの様な大きな穴です。穴の向こうにはダイナミックな波が打ち寄せていて、自然の圧倒的な力強さを感じます。
駐車場からアーチへ向かっていく遊歩道も超ダイナミック。水平線の向こうは南極大陸です。
ここはFur Seal Lookoutというにも展望台もあり、アーチに向かう途中にはNew Zealand Fur Seal(ニュージーランド・オットセイ)達が水浴びをしたり寝転んで日向ぼっこしている姿も見られます。岩山と同化して一見どこにいるかわかりませんが、寝転がっているオットセイがわかりますか?
【3】巨大な岩の彫刻「Remarkable Rocks(リマーカブル・ロックス)」
断崖絶壁の丘に鎮座する巨大岩「Remarkable Rocks (リマーカブル・ロックス)」も、カンガルー島随一のフォトジェニックな場所として人気のスポット。アドミラルズ・アーチから東へ7km、車で10分ほどの距離にあります。この辺りは森林火災でひどく燃えてしまったエリアでもあり、岩の周囲にあるティーツリーの木々も全て焼けてしまいました。
「一体誰が、どうやってこんな大きな石をここに置いたの?」と思ってしまうような唐突に現れる巨石。何と5億年の時を経て大きな岩が風雨に侵食されてこの形になったとか。その歴史や出来上がった経緯など、私の想像の域を遥かに超えています。
荒々しい茶色がかった花崗岩の塊は、壮大な彫刻かアート作品のような存在感。丘の上で神秘的な雰囲気を漂わせていて、造形美だけでなく神々しさのようなものも感じます。その横に立つ人が小ささでその巨大さがわかりますね。
大きな口を広げている恐竜に見えたり、爪を立てている巨人に見えたり、人によって様々な見方ができるのもモダン・アート作品みたいです。自然が作ったこの巨大な彫刻は、実際に訪れて体感して欲しいほど躍動感とパワーがあります。
【4】島1番の美しいビーチ「Vivonne Bay(ヴィヴォンヌ・ベイ)」
サウスコースト中央にある「Vivonne Bay(ヴィヴォンヌ・ベイ)」は、「オーストラリアの美しいビーチ」にもランクインしたビーチです。独特のブルーのグラデーションが特徴で、文字通りカンガルー島で一番美しいビーチなのでは。このJetty(波止場)も絵になります。夏だったら飛び込みたいほどキレイ!
人気のキャンプ・スポットでコテージやキャンプ場が林立してたそうですが、森林火災でこの辺り一帯は全焼。今でも焼けた木々は残っていますが、所々に緑の草も芽吹き、海の青とのコントラストもまた美しいです。
【5】野生動物を保護する動物園「KI Wildlife Park(ワイルドライフ・パーク)」
カンガルー島中央部にある「Kangaroo Island Wildlife Park(カンガルー・アイランド・ワイルドライフ・パーク)」は、150種類以上600頭のオーストラリア固有の野生動物と触れ合うことができる動物園。カンガルーやワラビーはもちろん、この島固有のEchidnas(ハリモグラ)やGoannas(オオトカゲ)もいます。
特にカンガルーやワラビーの餌やりは絶対体験して欲しいアクティビティの1つ。手の平に餌をのせると、私の手をしっかり掴んで餌を一心不乱に食べる様子が何とも可愛らしくて癒されます。
因みにここは「Kangaroo Island Koala and Wildlife Rescue Centre」という野生動物のレスキュー施設も兼ねていて、2019-2020の森林火災では負傷した650頭のコアラをはじめ様々な動物達を保護する中央本部として奮闘してきました。保護したコアラの約40%に当たる250頭のコアラは元気になって、既に森に返されています。
火災から保護したコアラは現在18頭。耳の一部が焼けてしまったり肌に痛々しい火傷の跡があるコアラもいますが、今ではみんな完治。今週も2頭のコアラを森に返すと言っていました。
(ただ赤ちゃんから園にいるコアラは野生でサバイブすることは難しいので、園内で一生暮らすことになるみたいです)
オーストラリアで絶滅が危ぶまれているコアラは州によって保護条例が制定されていて、シドニーのあるNSW州では抱っこはNGですが、南オーストラリア州のカンガルー島では抱っこもOKです。意外に爪が鋭くてビビりますが、その可愛さには超絶癒されます。
4068 Playford Hwy, Duncan SA 5223
TEL:08-8559-6050
OPENING HOURS:MON – SUN 9:00am – 5:00pm
【6】野生アシカのコロニー「Seal Bay Conservation Park(シールベイ保護公園)」
Vivonne Bayの東、車で30分の「Seal Bay Conservation Park(シールベイ保護公園)」では、野生のオーストラリア・アシカに出会えます。オーストラリアでは主に南オーストラリア州と西オーストラリア州に生息していて、国内で3番目に大きいコロニーだそう。
オーストラリア・アシカは昔、オイルや毛皮採取のため大量に乱獲され、今では絶滅危惧種に指定されるほど生存数が激減してしまいました。ここでは約1,000頭のアシカが生息していて、囲いなどは設けず自然な形で彼らを保護しながら生態研究を行っています。因みにアシカとアザラシは耳があるか無いか、前脚で歩くかお腹で這うかなどの違いがあるそう。
南極海の波が打ち付けるビーチには、三日三晩休まず漁に出て、疲れて帰り一休みしているたくさんのアシカ達が寝転がっています。赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸ったり、家族で並んでお昼寝してる様子が、何とも平和で幸せそうですね。
そんな彼らのコロニーの中心に実際に足を踏み入れられるのは、世界でもかなり珍しいとか。パーク内には$16.50で入場できますが、その際は限られた場所からしかアシカを見れないので、ここに訪れたら砂浜に出て彼らを間近で眺められるガイドツアー($37.00)が絶対にオススメ。
無防備に寝ているアシカ親子が何とも可愛いくて、その癒し感は半端ないです。デッキの上からは巣から浜辺へ一生懸命歩いている様子や、生まれたての赤ちゃんも見えます。カンガルー島に訪れたら絶対に外せないスポットの一つです。
Seal Bay Rd, Seal Bay SA 5221
TEL:+61-8-8553-4463
OPENING HOURS:MON – SUN 9:00am – 5:00pm
【7】野生動物に出会う「柵のない動物園」
カンガルー島は「A zoo without fences(柵のない動物園)」と呼ばれほど、島中にオーストラリア固有の野生生物がたくさん生息しています。国立公園や保護区内ではなくても、島内を車で移動しているだけで様々な野生動物に出会えました。
KANGAROO(カンガルー)
島の名前にもなっているカンガルーは、カンガルー島に訪れたら絶対に巡り会いたい動物の1つ。シドニーでも郊外に行くと普通に道端で跳ねている姿も見るので、実はそこまでは珍しくはありません。ただカンガルー島のカンガルーはオーストラリア本土にいるWestern Grey Kangarooの亜種なので、他のエリアでは見られない種類だそうです。
数万年前にオーストラリア本土と海を隔てて分断されてしまったことで、独自の進化を遂げています。体も小さく丸みがあり、チョコレートのような茶色い外観は、まさに「オーストラリアのガラパゴス」の象徴ですね。
WALLABY(ワラビー)
こちらはカンガルー属最小のワラビー「tammar wallaby(タマーワラビー)」。カンガルーやワラビーは夜行性なので、夕方の日が沈みかけた辺りから徐々に行動し始めます。
このタマー・ワラビーには島の北側にあるStrokes Bay近くの道端で遭遇。日中は茂みの低木の下に隠れているよ‥‥という話を聞いていたら、本当に低木の下にうずくまっていました。小さくてとっても可愛い!
KOALA(コアラ)
今までタロンガ動物園をはじめ様々な場所でコアラは何度も見たことがありますが、野生のコアラを見るのは今回が初めて。「普通にその辺りにいるよ」と言われたキャンプ場の森の中を歩いていたら‥‥本当にいました!
見付けた時は大興奮で思わず声を上げてしまいました。月並みな表現だけどすっごく可愛い!因みにコアラの餌と言えばユーカリですが、ものすごい偏食で食べるユーカリと食べないユーカリがあるそう。
もちろん鳥もたくさんいます。まさに野生動物の間をお散歩しているような、島自体が大規模なサファリパークです。
4WDで島を巡る「Kangaroo Island Odysseys(カンガルー・アイランド・オデッセイズ)」
今回カンガルー島巡りでお世話になったのがカンガルー島を巡るツアー「Kangaroo Island Odysseys(カンガルー・アイランド・オデッセイズ)」のGayleneさん。4WDに乗りながら、2日間じっくりとカンガルー島を案内してもらいました。
もちろんレンタカーを借りて自分のペースで島を巡ることもできますが、特に私が疎い「野生動物」や「自然」というジャンルについて、現地に精通するガイドさんの話を聞きながら回れるのは本当に有意義な体験でした。
ランチはGayleneさんお手製のボリュームたっぷりの料理とカンガルー島のワインで、森の中でピクニックしました。結構有名みたいだけど、カンガルー島でワインを作っているなんて知りませんでした。個人的にはFalse Capeのワインが美味しかったです。
Gayleneさん自身カンガルー島の自然保護活動に携わり、植物や野生動物についても精通、さらに昨年の森林火災のサバイバーでもあります。彼女の話はどれも興味深くて、彼女がいなかったらここまでカンガルー島は楽しめなかったんじゃないかな。シール・ベイなどはガイド無しでは中には入れないので、ガイドツアーは本当にオススメです!
島の半分が燃えた森林火災からの復活
カンガルー島は2019年末から2020年初めに起こったBushfires(森林火災)で、島の面積4,405㎢の約半分、フリンダーズ・チェイス国立公園に至っては公園の95%が消失。地元の人達やボランティア、消防士さん達の努力もあり火は鎮火しましたが、美しい自然や野生動物達、住民の人達に大きな傷跡を残しています。
オーストラリアと森林火災は切っても切り離せない関係で、毎年どこかで大なり小なり火災が起こっています。歴史的に見ても長い間「火が野山を焼き払いまた再生する」というサイクルは繰り返されていますが、それでも昨年の山火事は前例のない出来事だったそう。
今回私が島を訪れたのは森林火災から約一年後の2021年3月。煤の残った地面から緑の新芽が芽吹き、花も咲き始めていて、当時の火災の爪痕を感じると共に、植物や樹木の懸命に頑張る自然のパワーみたいなものを感じました。
今はそこかしこから聞こえる鳥のさえずりも、当時は静まり返ってただ静寂が流れていたそう。島の生態系(固有種と外来種など)にはまだ問題があるようだけど、新しい緑の芽が懸命に芽生えている様子は美しく、まさに希望に光ですね。
徐々に復興はしていますが、まだ完全に以前のような姿には戻ってはいません。募金や寄付ももちろんいいけれど、実際にカンガルー島に訪れて島を楽しむことが彼らのサポートになるので、これを読んだ皆さん、是非カンガルー島に訪れましょう!笑
オーストラリアの圧倒的な大自然
東京にいる時はアウトドアには全く興味がなく、キャンプはもちろん、ピクニックさえもちょっと‥‥という私ですが、オーストラリアに来て圧倒的に自然に触れる機会が増えました‥‥と言ってもまだまだ序の口。そんな中訪れたカンガルー島の圧倒的な大自然は私の想像をはるかに超えていました。
本当は数泊してじっくり回るのがオススメだけど、アデレードからも近いので頑張れば日帰りできない距離じゃないです。野生動物の宝庫、カンガルー島の大自然に身を委ねて、オーストラリア大陸の壮大な歴史と未知なる雄大さを感じられた旅でした。
オーストラリアらしさを満喫する旅のデスティネーションとしては、カンガルー島は本当にオススメです!
Special Thanks to Tourism Australia